湯浅誠

ある日の子ども食堂のメニューにコロッケが入っていたそうです。そして、その日に来ていた小学校5年生の子が、出されたコロッケを見たとき『これ何?』と言ったそうなんです。そのときに初めて、スタッフはその小学生がそれまでコロッケを食べたことがなかったと気付いた。このように、子どもたちの何気ない発言や行動の中に、家庭環境を知るヒントが隠れていることも多いんです。そういう意味での気付きの拠点です。 そして、『コロッケを食べたことがないならメンチカツも出してみようか』『誕生日を祝ってもらったことがないならみんなで誕生日会をやろう』『家族旅行に行ったことがないならみんなでBBQしよう』というように、ほかの子が家庭の中で経験しているけれどできていなかったことを経験する機会を提供することもあります。この子のように、児童相談所や生活保護に頼るほどではないけれど、周りの多くの子が経験していることをできていなかったり、小さな課題やモヤモヤを抱えたりしている子どもたちがたくさんいます。そういった子どもたちは、ぼろぼろの服を着ているわけではないし、がりがりに痩せ細っているわけでもなく、周囲からは気付かれにくい。しかし、子ども食堂で一緒に時間を過ごしていると、潜在的な貧困の要素に気付くことはしばしばあります